詩を書きます

どうか

誰にもされたことがなかった
あなたは私を優しく抱き上げて
その瞬間に心は溶け
夜中の窓の外から月が優しく照らしていた


これが続くならなんでもしようと思った
けれど人の気持ちは一瞬で変わるもので
不器用な私は
あなたのために尽くすなど続かなかった


「俺が好きならできるだろう」
他の男が言えば嘲笑してしまうセリフ
あなたなら笑えない
あなたはとても綺麗で様になって
心が痛い 涙が出そうになる
あなたを失う予感が胸をよぎって


どうか私から去らないで
抱き上げて笑ってみせて
二人が眠りにつくまで
白い月が朝の空に溶けていくまで

出会い

眠り続けた部屋を
ある心の晴れた日に抜け出して
仕事を探し
出会ってしまう
また 素敵な人に


きっと素敵な人は世界のあちこちにいるのだ
この薄暗いちっぽけな繭の中私が気がつかないだけで
心はときめく 外に出ようとする
そしてふらりと入った洗面所の鏡に映る私の貌を見る
額の皺に
弛んだ二重瞼に
垂れた目じりに
マスクでは隠しようのない 老い


久しぶりに会った素敵な人にときめいていた愚かさに惨めさを覚える
もう若くはない私
けれどきっと恋心は歳をとっても
死ぬまでこの心にまとわりつくのだ
顔を上げて 世界の明るい部分を見ようとする限り
出会ってしまう
素敵な人に

ルッキズムはハードルを越えない

顔を変えるの
あなたを愛してると口にしても
誰も笑わない顔に
自分を闇で売った金をつぎ込んで
つぎ込んでも
米粒のような眼はメスでくっきり刻んだ二重瞼に負け
鼻が長いのはどうしようもなく
顔中の黒子を取っても友達さえ気が付かない


普通より少し綺麗にしかなれなかった私は
あなたを愛しているとはいえず
ただあなたの一ファンに甘んじたふりをする


ルッキズムはくだらない
そんな言葉は恋の前には無力で
内面に恋するなんて後々の話で
「どこも悪い所がない」と言われるようになった
それでも美しさにはほど遠い私は
綺麗なあなたとの間に横たわるハードルの高さに
今日もただとまどうばかり