詩を書きます

振り返る

あれから長い歳月が過ぎて
魚の骨が喉に刺さったように
あなたに捨てられた痛みが
時折いまだチクチクと刺す


ずっと根に持っていた
寂しい自信のない若いだけの私を
惚れさせてあっさり捨てたあなた
時を経てようやく知る
自分を大事にしない女を男は大事にしない
そして
自分を愛せない女は男を愛せないことを


恰好よければ 傷つけてこなければ
誰でもよかった
そんな寂しいだけの私を見抜いていたのだと
今夜はじめて気がついたの
傍から見れば見え見えの
自分を憐れむ自分だけが可愛い女
そんな女を誰が大事にするだろう


今から変わるには歳を取りすぎて
もう私だけが私を愛するしかない
思いつくことと言えば
過去を振り返らないこと
せめて楽しかった思い出だけを思い出すこと
あなたの笑顔
あなたの抱擁
あなたの言葉
たとえそれが軽い気持ちで発せられたものでも
糧にして生きていけた


優しさで初まる恋 気障な言葉にほだされる恋
飽きられて終わる 傷を上塗りされる恋
振り回されたこともあった 本気の迫力に泣いたこともあった


孤独を癒すための恋 互いに傷を舐め合うための恋
失望して終わる 私達はなにも変わらない恋
期待して始まった 期待はずれの恋
それでもまだ時折胸をよぎる 楽しかった記憶
どうかあなたも そうでありますように