詩を書きます

不信

「好きな人ができた」と私が言うと
あなたはすかさず私の部屋に散乱する荷物をまとめた
「ここはあいつの会社の通り道だぞ。夜中に急にこの部屋に来て
 俺の荷物があったらどうなるか。嫌われたいのか」
痛んだヴィトンのボストンバッグを満タンにして
「千代子の荷物だけ預かってくれ」と私に差し出した。
薄汚れた布の白い鞄、中にはフリマで買ったという湯呑、下着……
「サメさんのところに行くの?」
彼は口を尖らせてクビを振る。
「サメさんは俺より後に入ってきた敦の面倒を見てやってる。俺の行くところはない」
彼には女がたくさんいる。どの女とも同棲したがらないのだ。
「俺は誰のものにもならない」
「じゃあ、あなたは私と同棲してる半年の間も私のものではなかったの?」
恨みがましいような、悲しいような、憂いを含んだ悲しい目で彼はじっと私を見る。
「男と女なんて駆け引きだぞ。人の気持ちなんて一瞬で変わる。それを忘れるな」
教えを残して彼は夜の闇へと車を突っ込んでいった。